発達障害児と旅行

息子の症状

 私たち夫婦の長男は『自閉症スペクトラム症』という発達障害をもっています。

 発達障害と言っても千差万別です。一口に発達障害と言っても個人個人でその症状は全く異なります。長男の場合は感情のコントロールがうまくできずに癇癪を起こし、一度癇癪が起こるとなかなかおさまりません。

 それと、コミュニケーション能力が乏しく、家族含め自分の気持ちを素直に表現することが難しいです。それがストレスとなって癇癪を起こすこともあります。

 長男の癇癪スイッチが入ると落ち着くまで相当時間がかかるので、自宅にいる場合は大きな声を出したり親に攻撃してきても周囲を気にすることなく長男を落ち着かせることに集中できますが、長男との外出中や旅行中では、周囲の人への迷惑や視線を気にしながらの対処になるので、外出や旅行をするときはヒヤヒヤものです。その癇癪スイッチがどこにあるのか、どのタイミングなのか、親である私たちにもわからないロシアンルーレット状態なので、長男との外出や旅行は癇癪へのドキドキを抱えながらとなるのです。

騙し騙しからはじめた家族旅行

 長男の癇癪が出始めたのは幼稚園年少の頃でした。幼稚園という見知らぬ世界に放り込まれ、気持ちの整理が中々つかなかったからだと思います。そう言った環境の変化や自我との戦いで幼稚園時代は息子自体混乱していた部分が多かったと思います。

 そんな中ではありましたが、私たち家族は息子と家族旅行をすることを楽しみにしていました。

 少しの環境の変化に敏感な息子ですが、いつまでも自分の世界に閉じこもっていることなんでできませんから、息子には旅行で色々な場所や体験を少しでもさせたいと思っていたので、必ず毎年どこかに旅行に行っています。

 ただ、最初の頃は騙し騙しの旅行でした。遠くに出かけることを察知すると癇癪が起こるからです。

 環境の変化が生じるのを嫌がるのか、今でも理由はわからないままですが、遠出をするときはいつも怒っていましたし、一度癇癪が始まると本当に治らないのです、、、、

徐々に家族旅行を楽しめる様になった長男

 長男は夫の実家(自宅から車で3時間程度)に帰る時もわかった瞬間に一気に難しい顔になり、ゴネ始め、しまいには癇癪を起こします。

 家族で温泉旅行に行く時も同じで、早い段階で旅行について説明しても同じです。

 とにかく、『自分の居場所=家』という安住の環境が変わることを極端に嫌いました。

 こうなってくると、旅行は親のエゴで息子をそれに巻き込んでいる毒親なのでは?等という考えも浮かびましたし、私たち夫婦が息子のために小さい頃から色々な経験をさせたいという思いを押し付けすぎて息子が意固地になってしまっているのではないかとも考えましたし、色々な経験をさせるのはもう少し大きくなってからでも良いのではないかという考えもありました。

 息子の育児は旅行に限らず、いろいろな面で悩み続けていて、その答えを見つけることもできませんでしたが、これを続けていると、長男が少しずつ旅行を楽しんでくれる様になっていきました。

 息子の成長に助けられました。とはいえ旅程を全て楽しんでくれるわけではなく、突然の癇癪や暴走はもちろんついて回りますが、旅行の中身を楽しんでくれる様になりました。

 息子の心の折り合いと言いますか、成長を感じる瞬間です。こういった息子の姿を見る時に夫婦で息子の成長に安堵し、震えるほどの喜びを感じるのです。

旅行中に息子が楽しめる様に

 息子が発達障害であることを認識してから、私たちがすぐにそれをしっかりと受け入れて日常生活でも旅行中でも息子の過ごしやすい環境を作ることができていたかと言われると決してそんなことはありません。

 普通の家族ならこういうときヒヤヒヤすることなく心の底から楽しめるんだろうな。息子と2人でのお出かけはデートみたいで常に穏やかな時間が流れるんだろうな。息子と過ごす時間はゆったりした時間が流れるんだろうな等と考えていました。

 ですが、現実は違いました。息子といるときはいつどこで癇癪が起こるか、突飛な行動はしないか等とヒヤヒヤしていることの方が多いですし、息子の癇癪や音声チック(汚言症)を傍で聞かされていると気が狂いそうになることもあります。

 それでも我が子は可愛いのです。愛おしくて仕方がないのです。

 なので旅行も楽しんで欲しい。先ほども言いましたが息子の成長とともに旅行を楽しむ様になった理由の一つとして、少し尊大な言い方かもしれませんが、私たち夫婦、息子にとっての両親の成長も一役買っているのではないかと思います。

息子を楽しませる旅行(外出)作戦

 本当に些細なことですが、息子に旅行や外出を楽しんでもらえる様に私たちがやっていることはつぎのとおりです。 

  • 旅行計画段階で息子に行き先等を伝え、旅行の道程等を一緒に計画する雰囲気作り
  • 旅行出発後すぐにコンビニに寄ってスタートダッシュをかける
  • 旅行中はパパとママがずっと一緒にいるという安心感を与える
  • 自分が主役だと思ってもらう

 お子さんのいらっしゃるご家庭では当たり前の内容じゃないかと思われるかもしれませんが、我が家はこの過程をより強調する様にしています。

❶ 旅行計画段階で息子に行き先等を伝え、旅行の道程等を一緒に計画する雰囲気作り

 行楽シーズンに旅行に行くとき、早めの段階から長男に旅行計画を説明します。長男の心の準備ができるので早ければ早いほどいいと思っています。

 例えば、夏休みの旅行計画は春先には伝える様にしています。

 とはいっても仕事の都合等で旅行日程は何ヶ月も前から立てられないので、最初は「夏休みに旅行に行くよ。」程度に伝えるのです。そうするだけで息子は心の準備を始めます。(始めていると思います笑)

 この心の準備が長男にとって非常に大事なのです。

 これまで、夫婦で旅行計画を立て、旅行に行く1週間くらい前に旅行のことを話すと見事に臍を曲げて旅行=自分の平穏を奪う出来事というインプットをしていまい、出かける前日や当日に癇癪、旅行中に癇癪という状況でしたから、計画段階からでもいいので長男に伝える様にしています。

 また、逆に早めに行っていた旅行が中止になる場合もありますから、そういうことも見越して「もしかしたら旅行に行くかも。」等と旅行にいくかもしれないという形で伝えています。

❷ 旅行出発後すぐにコンビニに寄ってスタートダッシュをかける

 これは旅行だけではなく外出するときは必ずコンビニに寄ってお菓子や飲み物を買います。

 長男にとっては、『外出=まずはコンビニに寄って買い物をする』という認識になるので、外出に対して少し楽しみすら覚える様になりました。まさに人参作戦といったところです。

 これをすることで息子が喜びますし、私たちも出かける際の景気付けにもなるのでwin-winですね(笑)

 ただ、お菓子の出費は嵩みます(泣)

❸ 旅行中はパパとママがずっと一緒にいるという安心感を与える

 旅行中は常にパパとママがそばにいて、いつでも甘えられる環境を作っています。

 長男は自分の安息が約束されないと癇癪を起こします。言い方を変えれば思い通りにことが進まないと癇癪を起こします。なので旅行中はパパとママが長男に付きっきりでいつでも甘えられる状態を作っておきます。

 ただ、気難しい子で癇癪スイッチがどのタイミングで押されるか全くわからないので、これはあくまでこちらの気の持ちようと言ったところかもしれませんね、、、

❹ 自分が主役だと思ってもらう

 これも❸の延長といえばそれまでですが、そもそも長男が主役で「君が楽しむために旅行は存在するんだ。」ということを伝えています。

 行く場所によってはゴネたりもしますが、長男は幼少期に連れて行った温泉旅行で入ってから露天風呂が好きになった様なので、行楽シーズンの旅行には温泉旅行を入れる様にしています。

 そうやって半強制的に息子を旅行に連れていき、旅行って楽しいんだ、パパとママとなら楽しい思い出が作れるんだ!という刷り込みをして、今ではすんなりと旅行についてきてくれる様になりました。

 それでも癇癪は起きるし、怒ってしまうことも多々ありますが、なんとか旅行というイベントはこなせる様になってきたかなと思っています。

長男の成長で一番嬉しかったこと

 長男は、発達障害ですが成長するに連れて心の成長は確実にしていると思っています。

 成長の中でも親として一番嬉しいのは

   『新しいことにチャレンジしてみること』ができるようになったこと

です。

 長男は、自分が安心できる環境を求めるので、自分が経験したことがないことや自分ができないのではないかということには一切チャレンジしません。できなかったらどうしようという不安が強いんだと思います。私たちがハッパをかければ臍を曲げ、宥めすかすと怒り出す。そんな状態でした。

 ですが、幼稚園の年長になり、小学校に入学して自分の世界が広がって行くと、長男は未経験のことに対してもチャレンジする様になりました。

 チャレンジと言っても、食べたことがない食べ物を食べてみる、遊園地等のアトラクションで乗ったことがない乗り物に乗ってみる。レジで店員さんに注文する。というほんの些細なことです。

 それでも我が家にとっては大事件です(笑)長男が未知のことにチャレンジすることはとてもすごいことなのです。

 長男が旅行を楽してめる様になったのは、こういった長男の成長が大きな理由だと思います。

これからも旅行を楽しむぞ!

 そんなこんなで、長男はなんの引っかかりもなく旅行に付き合ってくれる様になりました。

 それに、旅行先でも楽しんでくれる様にもなりました。

 長男が旅行への抵抗を無くしたのは、長男を旅行に連れて行くため、長男の癇癪ポイントがわからないなら楽しい気持ちになるポイントを探すという考えにシフトできたのも良かったのではないかと思っていますし、何よりも長男の心の成長の賜物だと思っています。

 相変わらず癇癪スイッチが入ると収拾がつかなくなりますし、今では『音声チック』という新たな症状と家族で戦っています。家の中で応援団の発声かと思うほどの声量で「◯ね!」、『おっ◯い!』、『キーっ!』という奇声を発するものですから参ってしまいます。

 だけども可愛いんですよね。本当に長男の笑顔には癒されます。天使と悪魔が共存しているのではと本気で思っています(笑)

 というわけで、長々とした吐き出しブログとなってしまいましたが、今は長男を含めた家族全員でディズニー旅行に行くのを目標に夫婦でせっせと働いております(汗)

 今後も旅行を楽しみます!

 では、また! 

 

  

タイトルとURLをコピーしました